前立腺がん、腎臓がん ダ・ヴィンチ手術100症例(2016年5月)

ダ・ヴィンチとは

当院は2014年8月に手術用ロボット「ダ・ヴィンチ」(da Vinci Si)を導入しました。

ダ・ヴィンチはアメリカで開発された内視鏡手術支援ロボットです。

外科医としての課題である正確な手術、身体への負担を減らすこと。その飽くなき探求よりダ・ヴィンチが
アメリカで開発され、ロボット支援手術は現在、全世界へ急速に普及しています。

日本では2012年4月より、前立腺がんに対するロボット支援全摘除術が健康保険の適用となっています。

2016年4月から腎がんに保健適用が始まり、今後も適用手術の拡大が期待されます。

  • 鮮明な3D画像

    3Dカメラで体内を立体的に映し出します。

    最大約10倍のズーム機能により、患部を拡大視野でとらえることが可能です。

  • 精密な動作が可能

    3本のアームを術者が自由に操作することができます。

    様々な形状の鉗子は人間の手と同等以上の可動域があります。

  • 手ぶれがなく正確

    手先の震えが鉗子の先に伝わらないように手ぶれを補正します。

    高い集中力を必要とする細かな作業でも、正確に操作することができます。

ダ・ヴィンチ手術映像

※閲覧注意:この映像には手術中の臓器なども含まれますので、閲覧には注意してください。
そのような映像が苦手な方はご覧にならないようにお願いします。
動画は、患者さんの許可を得た上で公開しています。

患者様のメリット前立腺がん

従来の前立腺手術の問題点

前立腺は、膀胱の尿を排泄する尿道を包むように存在し排尿をコントロールするのに
重要であると同時に、前立腺の外側を包むように勃起を起こす細かな神経の束が脊椎から陰茎へと走行しています。

このため前立腺がんに対して根治的な治療である摘出手術を行うと手術後に尿漏れや、勃起障害が生じることが問題でした。

ダ・ヴィンチ手術でこう変わる

  1. 身体への負担が少ない

    • 傷口が小さく、痛みがない。

      腹部の皮膚切開には3~4cm程1箇所、1cm程5箇所の小さな創のみ。
      開腹手術と比べ痛みがなく翌日から歩いてリハビリテーションが可能。

    • 手術時間が短く、回復が早い

      従来の腹腔手術に比べ手術時間が短い。翌日から食事を召し上がれます。

    • 出血量が少ない

      基本的には輸血を必要とせず、合併症も軽減。

  2. 手術後のQuality of Life(生活の質)向上

    • 手術後の尿道カテーテル留置期間の短縮

      前立腺摘出後の尿道と膀胱の吻合が正確なため、より短期間で尿道カテーテル抜去が見込めます。またそのことが入院期間の短縮へつながります。

    • 手術後尿失禁の早期改善

      前立腺と前立腺を包む筋肉、特に括約筋の位置を把握し、がんを残さずかつ筋肉を損傷せずに手術可能です。

    • 勃起機能の温存、早期回復

      従来の手術に比べ前立腺を包む排尿と勃起に寄与する神経をより丁寧に前立腺から剥がして温存(勃起神経温存術)することが可能

泌尿器科 部長 神田 和哉
腫瘍、泌尿器科一般、内視鏡、腹腔鏡手術、ロボット手術

医師メッセージ

2014年10月に開始した手術支援ロボット『ダ・ヴィンチ』による前立腺全摘術は2016年5月に100例を超えました。手術時間は2時間から3時間半程で手術の合併症もほとんどなく安全に行うことができています。入院期間は9日前後となっています。

腎細胞がんに対するロボット支援腎部分切除術は、保険適用となった2016年4月から開始しました。腹腔鏡手術に比べ複雑で細かな手術手技が可能となっています。

当院では「ダ・ヴィンチ」手術において泌尿器科医、麻酔科医、看護師、臨床工学士等でチーム『Si』を結成し、相補的な連携のもと、安全を重視したチーム医療による手術を行っています。患者さんにとってより安全で侵襲が少なく、機能温存を目指した手術を追及していきたいと考えております。

患者様のメリット腎臓がん

腎がん部分切除

腎部分切除術は小さな腫瘍(腎がん)に対する手術で、腎臓への血流を遮断した状態で腫瘍を正常な腎実質をつけた状態で切除し、腎臓の切除した部分を縫合する手術です。2016年3月までは腎部分切除術は腹腔鏡手術で行っていました。腹腔鏡手術は開腹手術に比べ切開創(皮膚切開)が小さく術後の疼痛も少なく低侵襲ですが、腫瘍の切除や切除部位を縫合するのは手技的に難度の高い手術です。「ダ・ヴィンチ」を用いた腎部分切除術は腫瘍の切除や縫合において3D画像を見ながら自由に動く鉗子で手術を行うことができるためより精密で安全な手術が可能となりました。またこの「ダ・ヴィンチ」手術では腫瘍切除や縫合が短時間で可能となり腎血流の遮断時間も短くなり腎機能の温存の点でも優れています。2016年4月から「ダ・ヴィンチ」腎部分切除術が保険適用となり当院でもこの手術を開始しました。当院での腎部分切除術は、より安全で高精度な手術が可能となっています。

(神田和哉)

患者さんの声

ダ・ヴィンチ手術で前立腺を摘出した患者さんにインタビューに応じていただきました。

-手術翌日「ジョギングしたい」気分!一年後、フルマラソンに調整-

前立腺がん 71歳 男性

私は、62歳のとき脳梗塞を患いました。軽度で済みましたが、医師からはメタボ宣告を受け、それを機に、夫婦でランニングを始めました。

健診でPSA(腫瘍マーカー)値が高いことが分かりました。自覚症状は一切なく、どうしたものかと悩んでいたところ、趣味のマラソンの仲間でもある中央病院井﨑先生に相談すると「私が診ます」の一言。迷うことなく「おまかせします」と返事して、中央病院泌尿器科に通うことになりました。

超音波とPSA検査を行い平成27年3月前立腺生検施行。前立腺癌の診断を受けました。骨シンチとCT検査を受け癌が前立腺に限局しているとのことで、井﨑先生と話し合って治療方法をダヴィンチ手術に決めました。

H27年5月 手術前日に入院、手術は麻酔によりあっと言う間、「終わりましたよ」の声で目がさめました。家内は摘出した前立腺とリンパ節を見せてもらい、ロボットを操縦していた時間は1時間43分、出血も少なく輸血もしなかったと説明を受けたようです。

手術の次の日昼から歩行練習。スロージョギングならできそうな気分でした。1週間後に退院。幸い尿失禁は全く認めませんでした。術後1カ月の診察。医師から「軽いランニングならOK」との許しがでたので、徳島中央公園6kmランから始めました。秋にハーフマラソンを走り術後1年でプラハマラソン(5月8日)に挑戦、無事ゴールできました。

手術の印象は、手術翌日から歩きだし、退院してすぐ仕事にかかれました。手術ってこんなに軽いものか、という印象。身内に開腹手術した人がいて、術後が辛そうだったので、それと比較して回復の早さに驚いています。ダヴィンチという最新医療と専門医師に出会えて、本当に運が良かった、と感謝しています。

泌尿器科 井崎 博文
ロボット手術、腹腔鏡手術、
尿路結石に対する手術

主治医からの意見

私も趣味でジョギングをし、色々なランニングクラブに属しています。そのため、ランニングと泌尿器科疾患などについて講演したりすることがありました。ジョギングクラブの年齢層が丁度泌尿器科を受診される方と重なるためこの患者さんのようなご相談を受けることが多くあります。

徳島大学時代から含めるとジョギングをされている5人の方がダビンチによる手術を受けられています。5人の方に共通なのは、いずれも術後の尿失禁が少ないこと。もしかするとジョギングにより骨盤底筋群が鍛えられているのかもしれませんね。

手術件数・費用

ダ・ヴィンチ手術数

H26年10月~ H27年 H28年 H29年~4月
前立腺がん全摘 10
※10月開始
61 71 22
腎がん部分切除 5
※4月開始
5

ダ・ヴィンチ手術の費用について

H26年4月から、ダ・ヴィンチによる前立腺がん全摘手術が健康保険の適用となりました。
またH28年4月から、腎がん部分切除も保険適用となりました。
これにより、従来の手術とあまり変わらない医療費負担で先進的な医療を受けられるようになりました。

さらに、健康保険の場合、高額療養費制度が利用できますので、
所得に応じた一定限度額の負担で、ダ・ヴィンチによる治療を受けることができます。

高額療養費制度を利用した場合の医療費自己負担額
(一般所得の方の場合)

医療費自己負担月額
70歳未満の方 80,100円(限度額)+(※)+ 食事代 + 保険外費用(個室代等)
70歳以上の方 44,400円(限度額)+ 食事代 + 保険外費用(個室代等)

(※)総医療費の1%(通常1万円程度)の追加負担額があります

チームSi

当院ではメディカルスタッフ(医療専門職)が連携して、
それぞれの専門スキルを発揮することで、的確かつ安全な医療を提供しています。

  • 多職種で「チームSi」
    合併症なく安全な手術実現

    2014年4月にダ・ヴィンチSiが導入される事が決まり、翌5月に医師、看護師、臨床工学士、事務員の多職種からなるチーム『Si』を立ち上げ、勉強会や手術見学、研修を開始しました。8月にダ・ヴィンチSiが導入され十分な研修およびシミュレーションの後、10月からロボット支援前立腺全摘術を開始しました。手術開始後も定期的な勉強会を施行し、それぞれの立場から安全性や改良すべき事項を検討しています。こうした異なる職種のメディカルスタッフが連携・協働し、それぞれの専門スキルを発揮することで治療の質および安全性を維持・向上させることができています。

    コンソール執刀医泌尿器科部長 神田 和哉

  • チームの力高め合い
    患者の安心をサポート

    ロボット手術は特殊な体位で行われます。そのため通常の手術よりも特に安全に配慮し、医師、看護師、臨床工学士たちが協力し、チーム力を高め合っています。また少しでも安心して手術に臨んでいただけるよう患者さんのサポートに努めています。

    看護師手術室 大杉 幸恵

  • 患者の変化に細心の注意
    安全な施術、チームで臨む

    ロボット支援前立腺全摘除術は、二酸化炭素による気腹および高度の頭低位で行われます。この特殊な体位に起因する呼吸・循環動態の変化等に充分注意し、患者様が安全に手術を終えられるよう、麻酔管理に臨んでいます。

    麻酔担当医師麻酔科 河野 裕明

  • 安全かつスムーズに
    ダ・ヴィンチ手術支える

    臨床工学技士は、「da Vinci Si」の導入からダヴィンチチームに携わり、手術時の準備、点検、撤収、手術中は手術映像の録画や調整行っています。現在まで大きなトラブルはなく順調にロボット支援手術が行われています。
    今後も臨床工学技士として、手術を受けられる方のために、手術が安全かつスムーズに遂行できるよう、より良い環境を作る努力をしていきます。

    臨床工学技士臨床工学科 武市 和真

  • 術前から術後まで
    患者さん一人ひとりと関わる

    ロボット手術における、器械の準備や点検、患者さんへのサポートを他職種と連携し、安全かつ円滑に手術が行えるよう取り組んでいます。

    また、患者さんひとりひとりと、術中だけでなく術前から術後まで関わることで、安心して手術が受けられるように心がけています。

    看護師手術室 松浦 七恵

  • チームで研究重ねて導入
    ロボット手術さらに発展

    徳島大学でロボット手術に携わり、2014年、中央病院に赴任しました。ダヴィンチSi導入へ立ち上げた「チームSi」は、シミュレーションを重ね、徳島大学・金山博臣教授の指導の下、1例目を無事完遂。今までに100例を越えるロボット支援手術を合併症なく行ってきました。当院のダヴィンチ手術の特徴は、コンソール(ロボットの運転席)を2台同時に使用できることです。ボタン1つで術者を変更でき、適切な指導が同じ視野で可能になります。導入当初と比べ、現在はコンソール時間(ロボットを動かす時間)2時間半まで、総手術時間3時間半までに、合併症なく実施できるようになっています。これは、同じチームで毎回手術を担当することとコンソール2台により無駄な時間を省くことができているためです。これからも徳島県のロボット手術を大学病院と共に発展させていくことができたらと考えています。

    コンソール執刀医泌尿器科 井﨑 博文

徳島県立中央病院

〒770-8539 徳島県徳島市蔵本町1丁目10-3 TEL:088-631-7151(代表) FAX:088-631-8354 FAX紹介状送付先:0120-631-715