循環器医療

冠動脈のカテーテル治療(冠インターベンション PCI)
-特に急性冠症候群の治療について

急性冠症候群(ACS) 徳島県医療の課題

最近日本人の死因は悪性新生物が第1位ですが、動脈硬化性疾患が主とされる第2位の心疾患および第4位の脳血管疾患を合わせると悪性新生物(悪性腫瘍)に匹敵し、特に食生活の欧米化や高齢化社会に伴い増加していくと予測されます。さらに徳島では糖尿病死亡率が最近まで連続第1位で、その死亡原因の約40%が血管障害であり、その中で第1位が虚血性疾患です。その意味でも虚血性疾患とくに急性期の死亡率が高い急性冠症候群(ACS: Acute coronary syndrome)の治療さらにはその予防は徳島の医療にとって重要な課題と考えられます。

ACSとは心臓に酸素と栄養を供給する血管(冠動脈、3本あります=図1)が動脈硬化を起こし、閉塞(急性心筋梗塞)または閉塞一歩手前(不安定狭心症)さらにそれに起因した心臓突然死を含めた心筋(心臓の筋肉)の急性の血流障害(虚血)所見を呈する症候群の総称であり、その病態は冠動脈壁における粥腫(じゅくしゅ)(脂質プラーク=垢)の破綻とそれに伴う冠動脈血栓(血の塊)の形成であり、それによる冠動脈の血流低下の程度や時間によって先程の疾患が生じます(図2)。

図1 冠状動脈

図2 急性冠症候群の発症機序

Fuster V, et al. N Engl J Med 1992

 

急性心筋梗塞 突然、冠動脈が閉塞

特に急性心筋梗塞は死亡率が20-30%程度ある致死的な病気で、突然死の多くはこの病気とされます。前述のようにほとんどが冠動脈のプラークの破綻が原因で閉塞し、8割が 50%程度の狭窄から突然閉塞します。よって発症前には強い胸部症状は認めません。プラークは血管の内側の細胞(血管内皮)が高血圧、喫煙、糖尿病(高血糖)およびストレス等によって傷害を受け、そこにコレステロールが沈着してでき、血管の狭窄をもたらします。さらに強いストレス、血管の攣縮(スパズム)や高血圧にさらされてプラークが破綻し、そこに血小板が集まってきて血栓ができ、血管が突然に閉塞します。そして心筋が壊死に陥り、心室細動のような死に至る不整脈が出現したり、心臓の全身に血液を送るポンプ機能が低下し、ショックになったりして死に至ります。さらに恐ろしいことに死亡の3分の2が病院に到着するまで(発症後1時間以内)に心室細動にて亡くなってしまいます。最近は自動除細動器(AED、心室細動を停止できる機械)の普及で病院到着前に亡くなる人は減少しています。病院に到着すると閉塞した冠血流を改善させること(再灌流療法)にて死亡率は低下しますが、それでもその後に心不全やショックさらには心破裂(心筋がもろくなって破れる)に陥ることで、5%程度の死亡率があります。どちらにしてもいち早く入院し再灌流療法を行うことが救命の第一です(発症後6時間を過ぎると救える心筋が少なくなります)。

カテーテル治療(冠インターベンション)で血管再灌流

現在、再灌流療法の主流は冠インターベンション(Percutaneous Coronary Intervention:PCI)によって再灌流を行う治療となっています。PCIは冠動脈の狭窄や閉塞を改善する治療で、急性冠症候群や狭心症の治療に用いられています。胸を開かずに行うことができ、手首(橈骨=とうこつ=動脈)や太腿の付け根(大腿動脈)の動脈から直接動脈にカテーテル(管)を挿入して、心臓までカテーテルを持って行き、冠動脈に挿入し、ガイドワイヤーという細い針金を狭窄または閉塞している(病変)部位に通して、それを使ってステントもしくはバルーン等を病変に持って行き、留置もしくは拡張して狭窄や閉塞を解除する手術です。現在ステント治療が主体で薬剤溶出性ステントが多く使われております。薬剤溶出性ステントは動脈硬化が再度出現(再狭窄)しないように炎症を抑える薬剤がステントの金属の膜から溶け出るようにしてあるステントであり、従来の金属ステントの再狭窄率(15%)に比較して2-3%程度まで減少させており、再狭窄による再治療を抑えることができます。

また待機的なPCIでは冠動脈の石灰化が著明な症例に対してはローターブレーターにて石灰化の切除を行うことにより、ステントが安全に、また十分な拡張ができるようになっております(図3)。当院のPCIもこのような動脈硬化性疾患の増加により、2015年では冠動脈造影数が1032例、PCI数400例、そのうちに緊急例が152例程度まで増加しております。

図3 PCIの治療種類
PCIの治療種類 ステント

発症予防 高血圧、喫煙など危険因子を抑える

しかし何よりも重要なことは発症を予防することです。それは動脈硬化を進めることを予防する(プラークを破綻させない)ことです。私たちの施設のデータでも、1.高血圧、2.脂質異常症、3.喫煙、4.糖尿病、5.肥満等を持つ人が発症しやすいことが分かっています。いわゆるメタボリック症候群はこれらの危険因子を多く持っており、非常に発症しやすいとされています。また最近は食生活の欧米化で30歳代からの若年発症が増加しています。さらに加齢でも発症は増加します。特に徳島は高齢化社会であり、運動不足からくる糖尿病や肥満の方が多く、必然とACSや脳血管障害等の動脈硬化関連疾患が増加しています。そのためにも前述のような危険因子の是正が必要です。まずはたばこをやめましょう。また塩分を制限し、血圧が高いようなら降圧薬を服用し血圧をしっかり下げましょう。そして過食や糖質および脂質の摂取(ファーストフード等を控える)を抑え、適度な運動をして、肥満を予防しましょう。

心臓CT 動脈硬化を診る

なお当科では心臓CTにて冠動脈の動脈硬化を調べる検査も施行しております。静脈内に造影剤を入れますが、カテーテル検査のように動脈にカテーテルを挿入しなくても冠動脈の動脈硬化が起こっているかどうかがわかります。早期に診断と治療を行うことができます。上記のような危険因子が多数ある方また労作(運動)時に胸痛等の胸部症状がある、もしくは脳や足の血管に動脈硬化があるような方は是非精査されることをお勧めします。繰り返しますが、急性心筋梗塞は怖い病気です。早期に発見して早期の治療が救命の近道です。そして何よりも発症しないように危険因子を是正することが一番です。

医療局次長(循環器内科) 藤永 裕之

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