循環器医療の症例

職場で倒れ、心肺蘇生処置→ステント留置術で再灌流

50歳台の男性で高血圧、糖尿病(インスリン治療)、脂質異常症および高尿酸血症にて治療中でした。仕事が忙しく、単身赴任で食事は外食が中心。喫煙(一日20本程度)があり、BMI29(正常18.5-24.9)と肥満も認めました。特にそれまでは胸痛は認めておりませんでしたが、仕事中に突然前胸部痛が出現し、その後心肺停止(呼吸と循環が停止)となりました。そばにいた人が心肺蘇生を開始し、さらにAEDを作動させました(心電図の解析で心室細動を認めておりました)。10分後救急救命士が到着時には心拍再開、呼吸も再開しておりました。発症後20分後に当院救命救急センターに緊急受診となっております。来院時、意識はまだ回復しておりませんでしたが、脈拍は110/分、血圧は190/100mmHgと回復しておりました。心電図等にて急性心筋梗塞と診断し、緊急冠動脈造影を施行しております。冠動脈は左前下行枝、右回旋枝および右冠動脈ともに閉塞しており重症でした。今回の閉塞は左前下行枝と考え、そちらに薬剤溶出性ステントを留置し再灌流に成功しております(図4)。その後は脳低体温療法を行い、翌日にはほぼ意識は回復し,神経障害等の後遺症もなく、退院となっております。

図4 PCIの治療


左前下行枝閉塞


左回旋枝閉塞


右冠動脈閉塞


薬剤溶出性ステント


薬剤溶出性ステント


再灌流後

前兆、軽い症状で見逃しやすい

このようにこの方は幸いにして救命できましたが、急性心筋梗塞は一刻を争う重篤な病気です。発症前は症状が出にくいですが、やはり前兆はあります。発症2、3日前に軽い胸の締め付け感や左肩が凝った感じを認めることがあるか、首の締め付け感や歯がうずく感じを認めることがあります。しかしほとんどが軽い症状のため見逃されることが多いです。そのときにはすでに血管がかなり閉塞しかかっております(不安定狭心症)。この段階でカテーテル治療を行えば急性心筋梗塞に至らず治療でき、心筋壊死にも陥らずほぼ正常に戻ります。命を落とす危険性も少なくなります。完全に血管が閉塞すると胸骨を中心とした胸全体の強い痛み(斧で胸をえぐられるような痛みだそうです)が出現し、冷や汗、吐き気さらには胃痛を伴うこともあります。また死の恐怖を感じるようです。どちらにしても前述のような症状が出現したら緊急で救急車にて専門の病院に受診してください。ACSは時間との闘いです。病院に到着して、治療を受ける時間が早いほど救命率は上がります。早期に発見、診断そして治療することが救命のキーポイントです。