脳卒中医療

脳卒中、切らずに治療=脳血管内治療

近年、脳卒中医療における脳血管内治療の進歩は目覚ましく、従来からの治療法に比べて、より迅速にまたより低侵襲に(体への負担より少なく)脳血管病変の治療が可能となってきています。ここでは現在当科において行っている脳血管カテーテル治療(表1)のうち、脳動脈瘤コイル塞栓術と脳主幹動脈閉塞症に対する血栓回収療法についてご紹介させていただきます。

表1:脳血管内治療件数(H27年度)
CAS:頸動脈ステント留置術
MMA:中硬膜動脈

脳動脈瘤破裂を防ぐ-コイル塞栓術

脳動脈瘤に対するの脳血管内治療は、2000年にはいり、大きく進んできました。脳動脈瘤は、従来のクリッピング手術に加え、コイル塞栓術が導入され、侵襲の低い治療が行えることとなりました。治療の実際ですが、コイル塞栓術は、大腿動脈または上腕動脈から造影下に、カテーテルを動脈瘤の部分まで誘導し、白金製のコイルを詰め、動脈瘤内を血栓化することで、破裂を防ぐ術式です。局所麻酔下でも行うことができ、所要時間も短く、脳の圧迫や神経損傷を起こすこともありません。

また、近年では、コイルの形状もバリエーションが増えており、ダブルカテーテルテクニックやステントアシストテクニックによる方法で、様々な部位や形状の動脈瘤にも対応できるようになりました。平成27年度において、当科におけるコイル塞栓術の件数は10件で、クリッピング(8件)よりも多く行われました。

脳動脈瘤内へコイルを密に詰めて血栓化させます

図1:コイル塞栓術

血栓取り除き、脳血管再開通

次に脳主幹動脈閉塞症に対する血栓回収療法についてご紹介いたします。脳梗塞急性期治療の一つにt-PA静注療法が標準治療としてありますが、投与開始可能な時間が短かったり(発症4.5時間以内)、様々な禁忌項目があるため適応患者が限られています。そこでt-PA静注療法によって症状の改善が認められない場合や治療の適応外の症例(発症4.5時間を経過し、かつ6時間以内である症例や、t-PA治療の禁忌症例)に対して、血栓回収デバイスによる血栓回収療法が注目されるようになり、当院でも実施しております(平成27年度は2例)。方法は、上記のカテーテル治療と同様にステントを組み込んだ特殊なカテーテルを血管閉塞部まで挿入し、血栓のあるところを通過させたのち、図2のようなステントを血栓のあるところで展開し、このステントにからめて血栓を取り除くもので、高い確率で再開通が得られます。

今後もさらに経験を重ね、より安全でかつより低侵襲な治療を提供できるようにしたいと考えています。

脳神経外科 田村哲也、新野清人

図2:血栓回収デバイス